マザー症候群

 「いえいえ。余りお役に立てなくて申し訳ありません。先輩、もう大丈夫ですか」
 井本が美波を気遣った。
 「ええ。大丈夫よ。やけ酒飲んだら、もうすっきりよ。これから、仕事もりもり頑張るからね」
 「それは、良かったです」
 「井本ちゃん。波斗の事は忘れていい人見つけてね」
 「そうします。これから、私も頑張らなくちゃ」
 井本が笑いながらガッツポーズをした。
 「私も応援するからね」
 「先輩。頼りにしています」
 二人はしっかりと手を握り合った。
 美波は井本に精一杯強がりを言った。が、傷口は、まだ口がぱっくりと開いた状態だった。
 美波は、游が若豹のように荒々しく癒してくれるのを心待ちにしていた。

 
 
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