マザー症候群
「あいつにがつんと言ってやりやしたよ」
游が語句に力を込めて言った。
「何て」
「あんな歳が倍も違う婆あと。あほぬかせと」
言いにくい事をはっきりと、遊が言った。
「お婆さんで悪かったわね」
と、意地悪そうに美波。
「そんな意味じゃないっすよ」
「じゃ、どんな意味」
「信用。信用させる為でさ」
游がむきになって呟いた。
「うふふ。可愛いんだから」
むきになって言い訳をする遊が、美波は可愛いと思った。
(今日はもっと虐めて上げるから)
意味深な笑みを浮かべながら、美波が心の中で囁いた。
「今晩は泊まれそう」
いきなり美波が際どい台詞。
「今晩ですか。う~ん」
游が首を傾げた。
「どうなの」
「朝早く帰ります。仕事があるので。それで、いいっすか」
「いいわよ。それでは、勘定を済ませるわね。後で行くから、先に行ってて」
美波は部屋のキーを游に手渡した。