マザー症候群
「嬉しい事言ってくれたので、游にお小遣いを上げる」
美波がバッグの中から財布を取り出した。
「まじっすか」
美波は財布から1万円札3枚を取り出して游に与えた。
「金欠だったので、助かりやす」
游が大袈裟に頭を下げた。1万円札を見る游の顔が、いかにも嬉しそうだった。
「旅行の事、決まったら連絡するから。心積もりだけはしていて」
と、美波。
「わかりやした」
「それから、お金は私が用意するから、心配しないでね」
「ごちです」
游がぺこんと礼をした。
「じゃ、明日は仕事でしょう。さあ、早く帰って」
「いいっすか」
「いいわよ」
と、美波が上機嫌で言った。
「部長・・・良かったっす」
意味深に微笑むと、游が走るようにして部屋を出て行った。