マザー症候群

 (部長・・・良かったっす)
 美波が游の言葉を反芻した。
 「嫌ねえ」
 美波が游のいたずらっぽい顔を思い出した。そして、にが笑いをした。
 「私もよ」
 と、美波、小さく独り言。
 この瞬間、美波は。
 波斗のこと。
 あのゲスな彼女のこと。
 数々の忌まわしい思い出。
 みんな綺麗さっぱりと忘れていた。
 今の美波にとって、游と二人で作る秘めた思い出だけが唯一の救いだった。
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