マザー症候群

 その休日。
 波斗と道瑠の二人は、ご両親に挨拶を行う為に道瑠の実家を訪ねた。
 道瑠の母、榎本光瑠が挨拶に来た二人を居間に案内した。
 居間には大きなテーブルがある。
 テーブルの中央に座椅子があり、父親らしき男がどーんと座っている。
 道瑠の父親、榎本修一は、中堅の建設会社の役員をしている。
 恰幅が良くドスのある、典型的な怖いタイプの父親だ。
 (やばい。怖そうだ)
 波斗は、挨拶をする前から、がちがちに緊張していた。
 (挨拶も無しに同棲しているんだから)
 (一発位殴られるかも・・・)
 波斗は覚悟を決めた。
 「はじめまして。沢波斗と申します。挨拶が遅れて誠に申し訳ありません」
 そこまで言うと、波斗が父親に向かって土下座をした。頭を畳につけるようにして。
 「君。頭を上げたまえ」
 修一が微笑みながら言った。


 
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