マザー症候群
波斗が頭を上げた。
修一は怒るどころか、柔和な微笑みを波斗に投げ掛けて来た。
「そんなに緊張しないでもっとリラックスしたまえ」
「あっ、はい」
「波斗さん、そんなに緊張しないで、もっと気をお楽に」
見かねて母親の光瑠が口を挟んだ。
「ありがとうございます。お父さん。お母さん。道瑠さんと結婚をさせて下さい。絶対に幸せにしてみせます。お願いします」
波斗が男らしくはっきりと言った。
「その前に、聞きたい事があるのだが」
と、修一が。
「何でしょうか」
「君の両親は離婚をされているんだね」
「はい。父親は母と離婚をし、現在は別の女性と結婚しています」
「と、言う事は、君はお母様と暮らしているのかね」
「はい、そうです」
「じゃ、聞くが。お母様はこの結婚に賛成されているんだね」
修一の柔和な顔が、厳しい顔になり鋭い眼光で言った。