マザー症候群

 「いいえ。母は反対しています。それで、挨拶が遅れたのです」
 「なぜ、反対されているのかね」
 「母と道瑠さんの間で少し感情のもつれが有りまして」
 波斗は有りのままを正直に話そうと思った。
 「感情のもつれとは」
 「初めて会った時。それは、僕が留学を終えて帰国した関空での事ですが。母も迎えに来ていたのですが。道瑠さんが僕に抱きつく時間が長くて母とは話が出来なかったのです。それで、母は怒って会社に帰ってしまいました」
 「そんな破廉恥な事があったのかね」
 修一は呆れたような顔をした。
 「母は、仕事の合間に迎えに来たので時間が無かったみたいです」
 「道瑠、なぜお母さまにそんな失礼な事を」
 「めっちゃ、逢いたかったもん。第一、お母様の存在なんか忘れてたわ。愛し合う二人が暫く振りに逢ったんよ。抱き合うのは、自然とちゃう」
 親の前で抜け抜けと道瑠が言った。


 
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