マザー症候群

 その日の帰り道。
 「大丈夫?」
 と、心配そうに顔を覗き込む道瑠。
 「大丈夫。大丈夫。そんなに酔ってないから」
 と、千鳥足の波斗。
 「良かったやん。親父に気に入られて」
 「まあな」
 「次は難攻不落のお義母さんや」
 道瑠が悲壮な表情をした。
 「大丈夫。大丈夫」
 波斗が酔った勢いで。
 「ほんま」
 「ほんまもほんま」
 「おっさん。頼りにしてまっせ」
 道瑠が笑いながら冗談を言った。
 「任せとき」
 二人は、それぞれの心配を胸に夜道を帰って行った。
 そよ吹く風が、二人の酔った体を優しく撫でて行った。

 
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