マザー症候群
それから数日経って。
波斗と道瑠は、連絡無しに美波のマンションに行く事にした。
連絡をしなかったのは、連絡すると美波に断られる可能性が高かったから。
波斗が恐る恐るチャイムを押した。
「誰?」
美波の不機嫌な声がした。
「俺だけど」
と、波斗がか細い声を出した。
「うちは必要ありません」
ガチャン。
チャイムを置く音が。
「まいったな。鍵を持っているから、開けて入るよ」
波斗が鍵を開け、中に入ろうとすると。
「不法侵入で訴えるわよ」
玄関で仁王立ちした美波が怖い顔で。
「俺は家族だから、訴えられても平気だよ」
「ゆっくりしているのに人騒がせね。いったい何の用?」
美波が迷惑そうに言い放った。
「大事な話があるんだよ。さあ、道瑠。中へ入ろう」
「お邪魔します」
道瑠が美波に丁重にお辞儀をした。