マザー症候群
「断ってるのに、居座るんだから。やくざよりもたちが悪いわ」
美波の言葉には、相変わらず棘がある。
食卓テーブルの椅子に腰かけると、美波が口を開いた。
「何の用?」
「お義母さん。波斗さんとの結婚をお許し下さい。お願いします」
道瑠が標準語で丁寧に挨拶をした。
「お義母さん。赤の他人に、お義母さんと呼ばれる筋合いは無いね」
「そんなあ。あんまりやわ」
道瑠が今にも泣きだしそうな顔をした。
「お袋。そんなきつい事を言わないで、俺たちの結婚を許してくれよ。頼むよ」
波斗が必死に美波に懇願をした。
「好き勝手にしたらいいんだ。私は関係ない事だから」
そう言うと、美波が焼酎の1升瓶をどーんとテーブルの上に置いた。
美波はそれをガラスのコップに注ぐとストレートで一気に飲み干した。
ウイっ。
「どいつもこいつも好きにすればいいんだ。好き勝手にね」
美波が二人に辛辣な言葉を浴びせた。