マザー症候群

 「私は二度見てるけどね。一度は関空。二度目はうちのマンションの前。破廉恥なラブラブショーさ。今日はかぶりつきて見せてもらうよ。さあ、早くやりなよ」
 美波が焼酎の瓶を持って胡坐を組んだ。
 「そんなあ」
 「何だったら、実演でもいいよ。濃厚なシーンを見せておくれよ。おひねりをはずんで上げるからさ」
 美波が、コップに一升瓶から焼酎をとくとくと入れた。
 「あんまりやわ。お義母さん」
 道瑠が泣きそうな声で。
 「お義母さんと呼ぶな」
 美波が怒鳴り声を出した。
 「話にならないよ。道瑠、帰ろう。後片付けは、後日しにくるから」
 波斗が泣きべそを掻いている道瑠の手を無理やり引っ張り、逃げるように出て行った。 
 「何がお義母さんや。お義母さんと呼ぶな。ゲス女からお義母さんと呼ばれたくないわ」
 美波は焼酎をぐいと煽った。胸がカーと熱くなった。
 「畜生!」
 「馬鹿たれが・・・」
 涙がぽろぽろと頬を伝って流れて落ちた。
 美波は涙で割った焼酎を飲みながら、ぽろぽろと泣き続けた。



 
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