マザー症候群

 二、三日後。
 美波が帰宅すると、玄関のドアに一枚の紙切れが挟んであった。
 その紙切れには。


 後片付けは済ませた。鍵をドアポケットに入れておく。
                       波斗
       



 そのメモを読むと、美波は波斗の部屋へ走って行った。
 部屋を開けた。
 中は空っぽ。
 プッシュピンひとつだけが壁面に刺さっているだけで、後は何も無い。
 「卵だ」
 美波が何か閃いた。
 急いで自分の部屋に行きアルバムの中から、美波が波斗の写真一枚を抜き出した。そして、それを波斗の部屋の壁面にプッシュピンで張り付けた。
 次に、美波は台所へ。冷蔵庫を開け、卵ラックから卵1個を取り出すと、美波がそれを持って波斗の部屋へ駆けて行った。
 美波、壁面に張り付けられた波斗の写真を見詰めて。
 「お前なんか」
 「お前なんか。息子じゃない」
 そう呟くと、美波が写真目掛けて卵を投げ付けた。
 ぐしゃ。
 卵は、写真の下側に当たり黄身が砕けて白身と共に下に流れ落ちた。


 
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