マザー症候群

 波斗は朝早く結婚式場である市内の一流ホテルに着いた。控室で結婚衣装に着替えると、波斗は着替えをしている新婦の控室へ。
 道瑠はメイクを終え、ウエディングドレスに着替えていた。
 立ち鏡に映った波斗に道瑠が。
 「お義母さんは?」
 「まだ」
  波斗が首を横に振った。
 「はよ、見つけて。見つかったら、連絡してん」
 「わかった」
 波斗が受付のある場所に向かって走って行った。
 途中、新婦の控え室を出た所で、道瑠の父親に出会った。
 「道瑠は綺麗じゃったろう」
 修一は飛び切りの自慢顔。
 「ええ、とっても・・・」
 波斗は急いでいた。それで、適当な言葉を口にした。
 「おい、もう行くのか。そんなに急いでどこに行くんだ」
 「ちょっと」
 会話もそこそこに、波斗は美波を探して走り回った。
 エレベーターから受付に至る通路にも、控室にも、結婚式場の中にも美波の姿は無かった。


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