マザー症候群
喧嘩の張本人 美波は結婚式をすっぽかして地下鉄御堂筋線の車中にいた。
手には、小さめの旅行カバンを持っている。
美波はドアに持たれ、ガラス越しに真っ暗闇の外を見ている。
自分の姿がガラスに映っている。
美波がガラスの中の自分自身に話し掛けた。
「これでいいの?」
「いいのよ」
と、美波がこっくりと頷く。
「なぜ?」
「波斗はもう私の息子じゃない。ただの赤の他人よ」
と、美波が嘆く。
「なぜ、許せないの」
美波が自問する。
「私より、あんなゲスな女を選択するなんて、絶対に許せない」
と、美波が憎々しくガラスに映る自分自身に語る。
「これからどう生きるつもり」
「私だって好き勝手に生きてやる」
と、これが美波の出した答え。
美波はガラスの中の自分自身と自問自答をして、この選択が間違ってないと確信をした。
地下鉄は暗闇の中を小さな灯りを頼りに目的地に向かって走って行った。