マザー症候群
5話 涙の逃避行
美波は新大阪の中央改札口で息子のような若者と待ち合わせをしていた。
新大阪駅は新幹線を利用する客で大変混雑していた。
混雑する客の中からそれらしき客を美波は目で追っていた。
息子のような若者とは、游だった。
游が現れた。
「行先は決まりやした」
行先が気になっていたのか、游は美波を見掛けるなり開口一番この言葉を口にした。
「ええ。一晩考えて、やっと決まったわ」
美波が微笑みながら答えた。
「どこっすか」
「京都。近くてごめんね」
「いいっすよ。部長と一緒ならどこだって」
游が複雑な笑みを投げ掛けた。
美波、結婚式の出席を直前まで迷っていた。
迷いに迷ったあげく、結婚式は行かない事に。それで、游に行先を言わずに、待ち合わせ場所だけを言ったのだった。