マザー症候群
京都にしたのは。今一番どこに行きたいか、心に問うと、その答えが京都だった。
近くに有りながらなかなか行けない場所。心が孤独の余り悲鳴を上げると、たまらなく行きたくなる場所。それが、京都だった。
二人は新幹線に乗り15分弱で京都に着いた。
京都駅前のタクシー乗り場へ。
「どこへ行くつもりっすか」
美波の顔を見ながら遊が尋ねた。
「最初に行きたい所があるの。そこに行っていい」
「いいっすよ」
游はどこに行くのか見当もつかなかった。
二人がタクシーに乗り込むと。
「花見小路まで行って」
と、美波が言った。
「祇園っすか」
「そうよ。着物に着替えたいの」
「着物を着るつもりっすか」
「そうよ。行きつけの貸衣装屋さんがあるの。京都に来たら和服で歩かなくちゃ」
「いいっすね」
遊がにいっと微笑んだ。