マザー症候群

 京都にしたのは。今一番どこに行きたいか、心に問うと、その答えが京都だった。
 近くに有りながらなかなか行けない場所。心が孤独の余り悲鳴を上げると、たまらなく行きたくなる場所。それが、京都だった。
 二人は新幹線に乗り15分弱で京都に着いた。
 京都駅前のタクシー乗り場へ。
 「どこへ行くつもりっすか」
 美波の顔を見ながら遊が尋ねた。
 「最初に行きたい所があるの。そこに行っていい」
 「いいっすよ」
 游はどこに行くのか見当もつかなかった。 
 二人がタクシーに乗り込むと。
 「花見小路まで行って」
 と、美波が言った。
 「祇園っすか」
 「そうよ。着物に着替えたいの」
 「着物を着るつもりっすか」
 「そうよ。行きつけの貸衣装屋さんがあるの。京都に来たら和服で歩かなくちゃ」
 「いいっすね」
 遊がにいっと微笑んだ。


 
< 153 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop