マザー症候群

 美波は布団の上でマニキュアの手入れをしていた。
 游も布団の上に胡坐を組んで座った。
 「ちょっと、話してもいいっすか」
 「いいわよ。何でも話して頂戴」
 「今回の旅行、親子の設定にと、言う事でしたが。息子さん、何かあったんすか。もしかして・・・」
 游が美波に鋭い質問をした。
 「うふふふ。息子はまだ生きてるわよ。でも、私の心の中からはいなくなったわ」
 「どういうことっすか」
 「遊だから正直にみんな話すわね。実は、今日は息子の結婚式だったの」
 美波、自分の心の奥を探るようにして。
 「ええ、まじっすか」
游が心底驚いたという顔をした。
 「ええ。そうなの。結婚式に出席するか、欠席するか、直前まで迷っていたわ。游に旅行の行先を言えなかったのもその為」
 「そうなんっすか」
 「京都に決めたのも、行きたかったのは事実だけど、近かったのも大きな理由よ」
 「どうして結婚式を欠席したんっすか」
 遊には、どうしてもその理由が理解出来なかった。

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