マザー症候群


 「そうね。実の母親が結婚式に欠席だなんて、おかしいわね」
 美波が寂しそうな顔をした。
 「そうっすよね」
 「私、あの女。息子の彼女の事だけど。虫が好かないのよ」
 (そうだ。虫が好かないのだ。あの女を嫌う最大の理由は)
 美波は、いま初めてあの女を忌み嫌う理由が思い当たった。
 「どうしてっすか」
 游が首を傾げながら質問を。
 「あの女と初めて会ったのは、息子が留学先から帰国した関空での事。あの女どうしたと思う。抱き合ってキスしているの。それも、長い長い時間よ。迎えに行った私は、息子とは話出来ず仕舞いよ。酷いとは思わない」
 「ちょっと酷いっすね。でも、若い恋人同士が久し振りに会ったとしたら。わからなくもないっすね。俺たちだってそうしたかも」
 遊が笑いながら言った。
 「そう。今の若い人って私たちとは違うのね。とにかく、あの女だけは駄目なのよ。虫が好かないの」
 美波、あの女の事を思い出しただけでもムカつく。


 
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