マザー症候群

 美波が游の目を見て。
 「遊がいてくれたら。游が息子になってくれたら。何もいらない」
 これが、今の本当の美波の心のうちだった。
 「俺でいいんっすか」
 「いいの」
 美波が大きくこっくりと頷いた。
 (俺はお袋の息子の代理か。代理か・・・。それでもいい。代理だっていい。お袋の苦しみを少しでも軽減させる事が出来れば。代理だっていい)
 游は心底そう思った。
 「その息子さんが波斗さんっすか」
 「嫌ねえ。覚えていたの。そうよ。波斗よ」
 (游は馬鹿じゃない。何でもお見通し。馬鹿なのは、むしろ私の方よ)
 美波は、ヤンキーの風貌の軽さの裏に、游の別の顔 大人の男の重厚さを見た。



 
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