マザー症候群
「わかってるやん」
道瑠が強い口調で。
「私がわからないのは、お前があの時、なぜあんなに怒ったかだ」
「あっ、あれ。私は花束贈呈を涙のうちにしたかってん。花束贈呈にめっちゃ憧れてたから。それが、新郎の母親が結婚式に欠席やなんて。ざけんな。頭に血がかーとのぼってしもてん」
道瑠は、あの時の感情をもう一度思い起こした。
「それは承知の上だろう。お前より、辛かったのは、むしろ波斗君の方だ。妻として波斗君をしっかりと支えるのがお前の務めだろう。それが、怒りを爆発させて結婚式を滅茶苦茶にするなんて。私は不束な娘を持って恥ずかしいよ」
修一が娘のいたらなさを恥じた。
「ほんまやな」
道瑠が修一の説教を素直に聞き入れた。
「波斗君みたいないい男を逃したら駄目だ。早く仲直りする事だ」
「わかったわ。そうする。親父、ありがとう。心配してくれて」
道瑠が修一にぺこんと頭を下げた。