マザー症候群

 旅行二日目の朝が明けた。
 游が目を覚ますと、隣の布団に美波の姿は無かった。
 その頃、美波は朝風呂を楽しんでいた。
 嫌な事も、辛い事も、みんな温泉の湯が洗い流してくれる。
 気まずい結婚式に参加せず、游と京都に来て本当に良かった。と、美波が湯に浸かり思った
 美波が部屋に戻ると、游が昨日撮った写真をカメラの液晶で見ていた。
 「いいお湯だったわ。游も入ってきたら」
 「俺はいいっす」
 游がカメラから目を美波に移した。
 美波は、ホテルが用意している浴衣を着ていた。
 美波の着物姿も魅力的だったが、浴衣姿も素敵だと、游は思った。
 美波は和服の似合う典型的な美人だ。こんな女性と一緒にいれる自分を、游は誇りに思えた。

 美波が化粧を終え、着替えを始めた。
 (あれっ、昨日とは違う)
 着物の袖を通す美波を見て、游が気が付いた。
 美波は器用に自分で綺麗に着付けもする。着物を着慣れているようだ。
 今日の着物は。
 白地にスミアミ80パーセントの縦のライン。それが、1㎝間隔で入っている。
 帯は濃紺地にピンクの蝶々が一匹羽を広げている。
 昨日の着物とは、随分雰囲気が違う。


 
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