マザー症候群

 これで会社に行けばいいのだが、それが出来ない。
「会社で頭をすっきりさせる為にと」
 「紅茶の空きボトルはどこだっけ」
 「あった。あった」
 美波が紅茶のペットボトルの中にウイスキーを流し込む。
 「色が近いからさりげなく飲めばわからない。まさに、完全犯罪」
 と、美波恐ろしい事を口にする。
 「お出かけ前の一杯」
 と、またグラスのウイスキーを一気飲み。
 飲むほどにアルコールの耐性が出来るのか、酒に強くなる。
 美波、朝から今日もご機嫌だ。
 「それりゃあ、行くか」
 「あれれ、舌が回らない」
 美波、「それじゃ」と言ったつもりが、舌が回らず「それりゃあ」に。最近、時々ろれつが回らなくなる。
 「ちょい待ち」
 美波、ちょっとふらついている事に気が付いた。
 「水だ。水」
美波がペットボトルに入った2ℓ入りの水をガム飲みする。
 そして、トイレへ。
 「ああ、すかっとした。今度こそ出かけるか」
 玄関で靴をはきながら、美波、あっちへよろよろ、こっちへよろよろ。
 「大丈夫か」
 「大丈夫、大丈夫」
 「これで仕事が出来るのか」
 「出来る。出来る」
 今度は、美波と楽観的な美波が互いの主張をぶつけ合う。
 楽観的な美波に背中を押され、美波が漸く外へ出た。


 
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