マザー症候群

 「そや。結婚式の披露宴。あんな無様な格好で終わったやろ。もう一度、やり直して、けじめをつけたいねん。ここがスタートラインにしたいねん」
 道瑠が仲直りの儀式をやりたいと言い出した。
 「そんな事を考えていたのか」
 「ええやろ」
 「いいけど」
 波斗も道瑠の提案に賛成をした。

 道瑠がケーキの前にナイフとフォークを置いた。
 「ケーキ入刀をするつもりか」
 波斗が驚いた目で道瑠に質問をした。
 「そや。もう一回、ケーキ入刀をやり直すねん。波斗も協力して」
 「まあ、いいけど」
 波斗、渋々応じる事に。
 二人がケーキの前に立った。
 「二人で協力し合う最初の仕事。めっちゃ、感激やわ」
 道瑠、ひとり感激。
 波斗が道瑠の上に手を重ね、二人でケーキを切って行く。
 一切れ。二切れ。そして、それぞれの皿にケーキを載せる。
 「あ~ん。波斗、食べさせて」
 「あ~ん」
 波斗がケーキを道瑠に食べさせる。次は、道瑠がケーキを波斗の口へ。
 ケーキは、甘く、切なく、子供の頃に食べた懐かしい味がした。


 
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