マザー症候群
エレベーターが20階で止まった。
美波はエレベーターを降りると、制作部の自分の席に向かって足を進めた。
喫茶店で休んだせいか、美波、しっかりとした足取りで歩く事が出来た。
「あっ、部長。体の方はもう大丈夫ですか」
電話を取ったグラフィックデザイナーの内山が声を掛けて来た。
「ありがとう。もう、大丈夫よ」
美波が内山に礼を述べた。
机の上には、伝票、パソコン、デザイン関係の書籍などが所狭しと置かれている。
美波は、ふらつく頭を時々ぽんぽんと叩きながら未処理の仕事をまず片付け始めた。
「重い」
いつになく頭が重い。軽い頭痛が美波の頭を小刻みに攻撃して来る。
気の遠くなるような気分の悪い時を経て、やっとのことで昼休みになった。
美波は大きな溜息を一つついた。