マザー症候群

 沢は、机の一番下の引き出しを引いた。そこには、小さなバッグが入っている。バッグの中には、物事を全てうまく運ぶ万能のウイスキーがご主人様を待っている。
 まるで、ご主人様の要求を何でも叶える魔法のランプのように。
 沢が小さなバッグに手を掛けた。
 「これさえあれば」
 沢が小さく独り言を言った。
 次の瞬間、沢がバッグを持っていきなり一目散に走り出した。
 行先は、秘密の空間トイレへ。
 上野と山根は、思いも掛けぬ沢の行動に一瞬驚いた。が、すぐに必死になって後を追い掛けた。
 「待てー」
 山根が叫ぶ。
 「部長!」
 上野が山根より遅れて走る。
 (走れ。走るのよ。マルサになんか捕まってたまるものか)
 沢がトイレまでの距離を死にもの狂いで走った。
 ハアハアはあ・・・。
 沢が息をハアハア言いながらトイレに駆け込んだ。


 
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