マザー症候群

 バターン。
 ドアを閉め鍵を掛ける。
 沢が小さなバッグから紅茶のボトルを取り出した。ボトルの中には、言わずと知れたウイスキーが入っている。
 「お待たせ」
 ゴクんゴクンゴクん。
 駆けつけ三口のウイスキー。
 喉に、キーーん。
 五臓六腑にカー――っ。
 うめえ。
 たまらん。
 殺せー。
 沢が手の平を見ると、震えは不思議と止まっている。裏も表も正常。
 「畜生!もう少し早く飲めば良かった」
 沢、ドアに持たれて大きく後悔。
 どんどんドンドン。
 突然、ドアを叩く音。
 「開けなさい。開けるのよ」
 ドアを叩く音に続いて、マルさ山根が金切り声を上げる。 
 静寂破れ、陶酔去る。ああ無情。


 
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