マザー症候群
沢と言えば、座ったまま扉に持たれ両足を投げ出して放心状態。
「沢部長。ドアを開けて下さい。さもないと実力行使を行います。よろしいですね」
「・・・」
沢は返事も無くうな垂れている。
「よし。実力行使開始!」
山根が扉を乗り越えて下に飛び降りた。
「沢部長、大丈夫ですか」
山根が沢の顔を覗いた。
「大 丈夫。ういっ」
沢が虚ろな眼差しで返事をした。
沢の手には、しっかりと紅茶のボトルが握られている。
山根が、沢からそれを取り上げて匂いを嗅いだ。
「あっ。臭い。やっぱり紅茶のボトルの中にアルコールが入っている。これで言い訳は無理ね」
山根は、正に証拠を掴んだマルサの顔付きだった。
「沢君は、大丈夫か」
ドアの向こうから水沢の声がした。
「大丈夫でーす。ドアをいま開けますね」
山根がトイレのドアを開けた。