マザー症候群
応接室の中。
「いったい何があったんだね」
水沢が優しく質問をした。
「お話しする前に、水を頂けませんか」
ウイスキーを立て続けに飲んだせいか、沢は喉がからからに乾いていた。
「山根君。悪いが、これで水を買って来てくれないか」
水沢が山根に千円札を渡した。
「わかりました」
山根が千円札を持って応接室を出て行った。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
沢が水沢に向かって深々と頭を下げた。
「いったいどうしたんだね」
水沢が沢に質問をした。
「息子が結婚しまして。嫁とうまく行ってないもので、ついつい酒に頼ってしまいました」
「嫁と姑の問題が原因だったのか」
「嫁だけでなく、息子にも失望しまして。酒に溺れてしまいました」
沢が力なく呟いた。
山根が席を立ち、沢は水沢になら何でも話せると思った。それで、洗いざらい正直に沢が水沢に話した。
「惜しいな。君は有望な女性初の取締役候補だったのに。こんなことになろうとは」
水沢は沢の力量を惜しんだ。
「申し訳ありません」
「それで、どう責任を取るつもりだね」
「今月末で辞職するつもりです」
「わかった」
水沢は沢の責任の取り方に満足をした。