マザー症候群

 そこへ、山根が水のペットボトルを持って戻って来た。
 山根が水を沢の前に置いた。
 「ありがとう」
 沢がペットボトルの蓋を開け、一気に水を飲んだ。
 ゴクンゴクンゴクン。
 「ああ、生き返ったみたい」
 からからに乾いた喉の渇きにみずみずしさが行き渡った。
「沢君は、今月末で辞職するみたいだ」
 水沢が山根に言った。
 「あっ、そうですか」
 (なぜ私のいないうちに・・・)
 山根は残念そうな表情をした。
 水沢部長に何もかも正直に打ち明けた傷心の沢だった。が、不思議と水を飲んだ後のように清々しい心境だった。













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