マザー症候群
「それは、ウイスキーだろう」
波斗が琥珀色の液体を見て呟いた。
「それがどうした」
「ストレートで飲んで。体に悪いよ」
「説教する気なら帰っておくれ」
ふらふらとよろける美波。それでいて美波が毅然と言った。
二人はリビングへ。
「いったい何の用だね。この親不孝者が」
美波が椅子に座りながら棘のある言葉を投げ掛けた。
とくとくとく。
ウイスキーをグラスへ。
かなり飲んでいるのか、美波の目が据わっている。
「よく言うよ。心配して来てやっているのに。もう飲むのは止めときなよ」
「うるさい。この親不孝者が」
美波は息子が幾ら助言してもウイスキーを飲むのを止めようとはしない」
「そんなに飲んだらアル中になるよ。体にも悪いし。お願いだから、俺の言う事を聞いてくれよ」
「あんなゲスな女房に尻尾を振る馬鹿息子の助言なんか、誰が聞くものか」
美波は波斗が助言すればするほど、酒をぐいぐい飲んだ。まるで、あてつけでもするように。