マザー症候群

 「あっ、游。そうですね。游ですね」
 美波の目の焦点が游に合った。何と、その目はすわっている。
 「ええええっ、、、部長っすか。まじで」
 游が驚きの余り目を丸くした。
 ブランド物のスーツでびしっと決めた美波しか見た事が無かったから。游の目には、まるで別人のよう。
 「私よ。わ た し。そうですよ。これがいつもの私ですよ」
 「・・・」
 游は何と言ってよいのか、うまく言葉が見つからない。
 「会社、首になったのですよ。そうですよ。首にですよ」
 「まじっすか」
 「女性初の取締役も夢じゃなかった私が。この私がですよ。そうですよ。私がですよ。首ですよ。うわ~ん」
 そう言って、美波が大声で泣き出した。
 うあ~ん。うえ~ん。
 美波、すでに酒をかなり飲んでいるのか、泥酔状態。
 「なぜ、首っすか」
 游が真面目な顔をして美波に質問をした。


 
< 229 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop