マザー症候群
「あっ、游。そうですね。游ですね」
美波の目の焦点が游に合った。何と、その目はすわっている。
「ええええっ、、、部長っすか。まじで」
游が驚きの余り目を丸くした。
ブランド物のスーツでびしっと決めた美波しか見た事が無かったから。游の目には、まるで別人のよう。
「私よ。わ た し。そうですよ。これがいつもの私ですよ」
「・・・」
游は何と言ってよいのか、うまく言葉が見つからない。
「会社、首になったのですよ。そうですよ。首にですよ」
「まじっすか」
「女性初の取締役も夢じゃなかった私が。この私がですよ。そうですよ。私がですよ。首ですよ。うわ~ん」
そう言って、美波が大声で泣き出した。
うあ~ん。うえ~ん。
美波、すでに酒をかなり飲んでいるのか、泥酔状態。
「なぜ、首っすか」
游が真面目な顔をして美波に質問をした。