マザー症候群

 「つべこべ言わずに・・・観覧車に・・乗りなさい。決めた。からね。変わら・ないよ。15分の遊覧飛行が終われば・・・。それで、お・し・ま・い。終わり。二人は赤の他人だからね」
 美波がふらふらしながらも毅然と言った。
 「嫌だ」
 游が強情に拒否をした。
 「さあ、乗るからね」
 あれほどふらついていた美波が。不思議も不思議。しっかりとした態度を見せた。
 二人は赤い観覧車の中へ。
 游は不機嫌な表情で対面の席に座った。
 観覧車が動き始めた。
 都会の雑踏を眼下に、観覧車がゆっくりゆっくりと回り始める。
 赤、青、黄。都会の宝石がまばゆいばかりに煌びやかさを競い合っている。


 
< 233 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop