マザー症候群

 美波は、移り行く都会の夜景をただぼんやりと見詰めていた。
 観覧車が止まった。
 美波はよろけながら観覧車を出た。
 游も美波の後に続いた。
 「じゃね」
 観覧車を出るなり美波が游に手を振った。
 「バイ・・バーイ」
 美波は手を振り終わると、よろけながら游と反対側の道を歩き出した。
 游は美波の背中を悲壮な面持ちで見送っていた。そして、雑踏の中を走り去って行った。
 あっ!!美波がよろけてこけた。
 「あっ」
 「いてててて」
 こけた痛みよりも、游を無くした痛みの方がずっとずっとずっと美波には痛かった。

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