マザー症候群

 ピンポン。ピンポン。

 波斗が実家のチャイムを押した。
 返事が無い。
 また、チャイムを押す。
 やはり、返答が無い。
 波斗が首を傾げながらドアのノブに手を掛ける。
 ノブを回す。
 何と、ドアの扉が開いた。鍵が掛かっていなかったのだ。
 このご時世。何と不用心な事だろう。
 波斗が母親の不用心さをぼやきながら家の中に入った。
 お袋!
 お袋~。
 室内に入るなり波斗が大声で母親を呼ぶが。
 やはり、返答が無い。
 おかしい。
 波斗が速足で廊下を歩き、リビングに続くドアを勢いよく開けた。
 あっ、お袋!
 波斗の視線の先に、テーブルに蹲る母親の姿が。
 美波はテーブルに崩れたようにして蹲っている。
 波斗が急いで母親に近づくと。
 美波の傍らに、何と真っ赤な鮮血が流れているではないか。


 
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