マザー症候群

 王子さまは夫、波斗ではなく、実は目の前で熱く囁く峰ではなかったか。
 (王子様をみっけ)
 (もうどうにでもして)
 道瑠は酒に酔いもうろうとした意識の片隅で、新しい世界への現実逃避を求めていた。
 「マスター。お勘定」
 峰が、財布から紙幣を数枚出し勘定を済ませた。

 「ありがとう。ドラマのような一日を」

 マスターが意味深な言葉を言った。
 「名シーンにするよ。じゃ」
 峰が道瑠を抱き抱えるようにして外に出た。二人はネオンの海に消えて行った。

 
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