マザー症候群
会場の真ん中に10脚ほどの椅子が円形に置かれている。
その椅子に女性たちが座っている。
女性たちの年齢は20代前半から、60代後半までと様々だ。
美波は一つだけ空いている席に腰を下ろした。
主催者が熱く語り始めた。
話の内容は断酒することがいかに大切で難しい事か。その為には、その日、一日一日を酒を断ち大切にする事の大切さが強調された。
つづいて数人の経験談。そして、体験談に対する参加者の質問、感想となっていた。
集まりの途中で、美波は例会場を後にした。
(もうここには来ないだろう)
帰り道、こんな思いが、美波の脳裏をよぎった。
なぜ?なぜなら自分は他の参加者と違う、
と、美波は思ったから。
自分は辞める気になればいつでも辞められる。辞める気になりさえすれば。
と、自信を持って美波は思っていた。