マザー症候群
次の日。
昼間は断酒会の経験談から学んだように、映画を観たり、ショッピングセンターでウインドーショップしたりして時間を潰す。
断酒しようとする者には、魔の時間帯と言われている午後7時から9時。
愚かにも、美波は自宅に戻っていた。
もちろん、家の中の酒は、1本残らず息子の波斗が処分していた。
たとえ、飲みたくなったとしても、家の中に酒は無い。と、言って外に買いに行くほど馬鹿でもない。
久し振りに、美波は自分で作った料理が食べたくなった。
鯛の煮付けと、卵焼きと、味噌汁を作る事にした。
卵焼き、つづいて豆腐の味噌汁。
最後に鯛の煮付け。
醤油、砂糖、みりんと入れて、次に料理酒を入れようと、美波が瓶を持った。
大さじに料理酒をとくとくとくと入れる。
な、なぬーーー。酒だ!
料理酒と言えど、何という香しい酒の香り。
これは、酒だ。まさしく酒だ。
少しだけ飲んでみるか。
駄目駄目。今は、断酒中。
ひとくちだけなら。
駄目と言ったら駄目。
料理の味見ということで
それならひと口だけだぞ。
と、美波ともう一人の美波が論争の末、結論は。
ほんの少し飲んでみることに。