マザー症候群
 
 料理酒をとくとくとく。
 「これが最後ですからね」
 言い訳も空空しい
 ゴクンゴクンゴクン。
 「うめえー。殺してーーー」
 調子に乗って料理酒を飲んでいると、ついには瓶は空に。
 「ええ、もうないの。そんな殺生な」
 「誰か酒を持って来~い」
 「波斗。波斗ったら。母の一生のお願いだ。酒を持って来て…下さいな、と。親孝行は親が生きているうちにするもんだよ。いない。後で後悔するよ。ときたもんだ。なあ、波斗!えっ、まだいない。どうしてこんな大切な時にいないんだ。親は死にそう。そう、酒が無いなら死ぬよ。構わないのかい。この親不孝者が。ば~か」
 美波、流し台にもたれて足を大の字に。そして、言いたい放題。ひとりで喚いてはくだを巻いている。
 「仕方がない。買いに行くか」
 美波が千鳥足でコンビニへ酒を買いに出かけた。
 あっ、危ない!
 美波、よろけ石に躓いてどってんばったんと転ぶのでした。


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