マザー症候群
波斗は久し振りに仕事帰りに自宅に戻った。 洗い替えや今の季節に必要な衣類を調達する為だ。
寝室。
波斗が箪笥から衣類を見繕っていると、そこへ道瑠が凄い剣幕でやって来た。
「何しに帰って来たん」
「見たらわかるだろう」
と、道瑠をチラッと見る波斗。
「何日も家を空けてどういう気」
「お袋が血を吐いて病院に入院したんだよ。だから、仕方ないだろう」
「それがどないしたん。もう退院したやないか」
道瑠は怒りが沸騰しているようだ。
「ひとり息子としては、お袋を独りにはしておけないだろう」
「嫁はほったからしにしてもか」
道瑠、鬼のような顔で。
「悪いと思っているよ。ごめん」
「悪いと思てんねんやったら、帰ってこんか。お前の家はここや。おのれはわかっとるんか。どあほが」
道瑠が汚い言葉遣いをする時。それは、かなり頭に来ている時だ。
「悪い」
波斗はひたすら謝るだけ。