マザー症候群

 「今日はどうするんじゃ」
 怖い顔をして道瑠が尋ねた。
 「何が」
 「どこへ泊まるんかと聞いとるんじゃ」
 「・・・悪い。着替えをバッグに詰めたら実家に帰るつもりだけど」
 罰悪そうに波斗が言った。」
 「われは何を考えとるんじゃ。ぶっ殺したろか」
 道瑠が拳で殴る仕草をした。
 「お袋を一人にすると、また酒に手を出すに違いない。もう少しの間だけ。頼む。一生のお願いだ」
 波斗が道瑠に向かって両手を合わせた。
 「お袋が大事か。嫁が大事か。選択せんかいや。おのれはどっちを選ぶんじゃ」
 「俺にはお袋も大事だし、道瑠も大事だ。どちらか一人を選ぶ事なんか出来ない」
 「それでも選べと言ったら。おのれはどうする気や」
 道瑠がさらに選択をせまった。


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