マザー症候群

 こんな調子でウイスキーを飲みつづけていると。あっという間にウイスキーの瓶が空になる。
 ういッ。
 「酒は人生の友・・ですね。悲しい時は慰めを与えて・・・くれますね。そうですよね。嬉しい時は、喜びを倍増して・・くれますね。二倍に。いえいえ五倍に。まだまだ十倍に・・してくれますよね。
 それに、一番の魅力は裏切らない。かな。人間はすぐに裏切り升。大きな一升ますです。よね。酒はどんな時も期待を裏切りません。千ですよ。いや、万ですよ。だから、酒こそが親友、そう心友・・なんですよ」
 美波は酒に酔いひとり饒舌に訳の分からない事を語るのでした。
 美波が一升瓶を持って流し台に持たれて足を大の字に投げ出した。
 酔うほどに、美波、一番楽なこの姿勢に。
 美波の横には、どーんと鎮座まします一升瓶が。
 酒が一升瓶の半分位になった時、美波はぐてんぐてんに酔っていた。
 酔うと、本音が口からぽろり。
 「波斗!この親不孝息子が。あんな嫁のどこがそんなにいいんだよー。ウイっ。その気になれば幾らでも気立てのいい子がいただろうに。ば~か。大体、趣味が悪いよ。悪趣味。そう悪趣味。なんだよー。人前で赤い舌なんか出しやがって。赤い舌だよ。ゲスな女だ」
 「やい、波斗。お前が甘いから。そう、砂糖より甘いからあの女がつけ上がる、んだよー。この親不孝の出来損ないが。ウイっ」
 大声で美波が喚き立てている。


 
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