マザー症候群

「お袋のこんな情けない姿なんか見たくない。あ~あ、泣きたいよ」
 波斗が両手で顔を覆った。

 「いっその事、お袋を殺して俺も死のうか」

 「もう・・・死にたいよ」

 波斗の心の叫びだ。


 道瑠と離婚話までして母親を見守ろうと思っている波斗。その波斗が、落胆の余り一瞬の間 思考力を失った。
 次の瞬間、波斗が我に返った。

 「お袋、いったいどうしたんだ」
 「断酒中なのに、なぜだ」

 波斗が美波の体を揺さぶった。
 美波は酔ったもうろうとした意識の中で、息子の心の声をはっきりと聞いていた。


 
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