マザー症候群
「お袋。病院に行こう。心配しなくていいからね」
波斗は母親にいたわりの言葉をかけた。
一瞬迷ったが、波斗は救急車を呼ぶ事にした。個人が深夜に病院に行っても断られる可能性が高い。と、波斗は考えたから。
二人は救急車で病院へ。
美波は退院して二日後に、またアルコール依存症の専門病院に舞い戻った。
病院の医師は。
「この病院に舞い戻って来られる患者さんはたくさんおられますが、二日目に戻って来られる方は稀ですね」
と、言っておられた。
だが、二度目の入院は一度目の入院とは全く違う。と、美波は思った。
何がそんなに大きく違うのか、と言えば、それは真剣さ。
「お袋のこんな情けない姿なんか見たくないよ。泣きたいよ。死にたいよ」
息子の心の声が、美波の心につねに突き刺さった。