マザー症候群
病室のベッドでひとり目を閉じると。
「泣きたいよ。死にたいよ」
と、言う息子の悲壮な心の声が聞こえて来る。
このまま酒を飲み続けていると、本当に息子を亡くすかも知れない。
この恐怖心が美波を本気にさせた。
「今度こそは何が何でも酒を断ってみせる」
飲みたいという誘惑や、体の渇望にも。逃げない。負けない。むしろ、積極的に闘いを挑むことにした。
あんな惨めな姿をもう二度と息子には見せたくないから。
美波は毎日毎日を歯を食い縛って耐えた。
断酒会の主催者が一日一日酒を断ち、一日一日を大切にと、声を大にして言われていた。この意味がいま始めて美波の骨身にしみわたった。
このように思いを切り替えて、美波は地獄の苦しみと必死で闘い、この病院を退院する事になった。
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