マザー症候群
確かに、プレゼンに勝つ自信はあった。が、負ける覚悟もしていた。
プレゼンの相手は、天下の博広堂。営業力が違い過ぎるし、クリエイティブ力も相当なもの。勝てる確率は、贔屓目で見ても2割。8割方は負けるもの。
美波はそう考えてい。と、言うより、強がりは言っていたが、むしろ負けるものと、美波は思っていた。
それが。それがである。あの天下の博広堂に勝った。
(嘘でしょう。こんな日が来るなんて。アル中に苦しみ、再起は駄目だと諦めかかっていた日が夢のよう。嬉しい。嬉し過ぎる)
美波が辛い日々を思い出し、目に薄っすらと涙を溜めていた。
(勝った。勝ったのよ。あの博広堂に。そして、あの辛い日々に)
美波は心の中で力いっぱいガッツポーズを取っていた。