マザー症候群
「アル中で病院に何度も入院した時には、もうあかん。美波もこれまでや。奇跡が起こらん限りは、娑婆には生還できん。それが、奇跡が起こるとは。世の中は、ほんまわからんもんやわ」
生ビールと酒の肴を3品ほど注文すると、真知子が先程の続きを。ビールを半分ほど一気に飲みながら、真知子が呟いた。
「私もそう感じたわ。病院にお見舞いに行って美波の顔を見た時。ああ、美波が廃人になる。もう生還出来ないかもとね。美波がもう駄目と思ったら、思わず涙が零れちゃったわ」
知美が真知子の言葉に同調した。
「美波、一つ質問してもええ」
真知子が嫌に真剣な顔をして美波の目を見詰めた。
「いいよ。何?」
美波が生ビールを飲むのを止めて真知子の質問を待った。
「怒らんとってね。うち、マジで美波はもう生還出来んと思とったわ。うちの勘やけど。その勘が外れたのは、何で」
「そうそう。私も全く同じよ。何故、生還出来たのその理由か知りたいわ」
真知子の意見に全く同感だという顔を知美がした。