マザー症候群
「さすが、波斗。ええ事言うで」
波斗の言葉を美波から聞いて真知子が感動している。
「最愛の息子の命が掛かっているか。それでは、美波も酒を止めん訳にはいかんわな」
と、美波の心情を推測する知美。
「そうなのよ。あれ以上、酒を止められないと本当にあの子を亡くす。そう考えるとどんなに辛くても酒を止めないと。波斗の命を守る為にも必死で頑張ったという訳よ」
「美波が娑婆に生還出来た秘密は息子の命を守る為か。息子は大事やなあ。最後に母親を守るのは息子か。ああ、息子は作っとこなあかんな」
いまだに独身の真知子がしんみりと呟いた。
「生還の秘密は息子だったのか。母親は弱し、されど息子は強しか。それにしても、よう生還出来たね」
知美が美波の顔を見てにっこりと微笑んだ。
「実は。波斗の事以外、どうしても酒を止めなければならない理由が、もう一つだけあるの」
美波が意味深に語った。
「嘘やろ。まだあるのかいな」
「言いなさいよ。こうなりゃみんな聞いて上げるから」
真知子と知美が顔を見合わせて、信じられないという表情をした。