マザー症候群

 「それで、ある夜。二人をふたりっきりにしてね。男と女の関係になれば、自然と夫婦になるのではないかと」
 と、美波が。
 「おもろい展開やな」
 真知子が興味を示した。
 「思惑通りに行ったの」
 と、知美。
 「それが、思惑通りに運ばないの。あくる日、井本ちゃんにそれとなくどうだった、と聞いたら。何もなかったって。もう、頭に来たわ」
 あの時の情景を思い出したのか、美波が生ビールの残りを一気に飲み干した。
 それでね。私は波斗に言ってやったわ。
 「私がアル中になったのは、波斗、あんたのせいだ。あんなゲスな嫁をもらうからだってね。責任を取れ。潔く井本ちゃんと結婚して親を安心させろってね」
 美波が興奮気味に呟いた。


 
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