マザー症候群

 「少し強引じゃなーい」
 と、知美。
 「波斗はどう答えたん」
 今度は真知子。
 「結婚してもいいだって」
 「へえー」
 「嘘やん」
 と、知美と真知子。
 「ただし、一つだけ条件があるって」
 「条件とは何よ」
 「はよ、言いな」
 真知子がせかした。
 「条件とはね。私がアルコールを断って、また前みたいに颯爽と働く事だって」
 「敵もさるもの引っ掻くものね」
 と、知美。
 「それで私は必死のパッチでアルコールを断ったという訳。アル中から生還出来たのは、波斗の命が掛かっている事もあるけど、8割方は意地ね」
 「意地か」
 「女の意地は凄いパワーがあるねんな。やる時はやりまっせ、さすが、美波姉さん」
 知美の言葉を真知子が受けて大袈裟に美波の意地を褒めた。


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