マザー症候群


 「それで、美波が意地という接着剤でくっつけた二人はうまい事いってるの」
 知美が美波に尋ねた。
 「それが、うまく接着してるの。井本ちゃんは気立てのいい子だし、料理もうまい。それに、姑がべた惚れとくれば、波斗もいうことないのじゃない。前のゲスな嫁とは大違いよ」
 美波が今の嫁を絶賛した。
 「前の奥さんはどうしているの」
 知美が美波に尋ねた。
 「知らないわ。私の家族には、もう関係ないし」
 美波が冷たく言い放った。
 それから3人は話題を変え、大学時代の楽しい思い出に花を咲かせ、おいしい酒をたらふく飲むのでした。

 その帰り道。
 美波は夜道をぶらり歩く事でほろ酔い気分を冷ました。
 「本当に生還出来て良かった。こんな日が来るなんて嘘みたい」
 夜道を歩きながら美波が独り言を呟いた。
 その夜。
 美波の脳裏から、プレゼンに勝ったという驚くべき出来事は完全に吹っ飛んでいた。


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